『ハッピーボイス・キラー』をスクリーン上に実現する鍵は、マイケル・R・ペリーのジャンルの枠にはまらない脚本のスタイルに忠実であることだった。この作品の監督には、ジェリー(ライアン・レイノルズ)が世界と取り結んでいる感情的関係をビジュアル化できる手腕を持つ人物を探す必要があった。脚本に対して独創性と個性を作品に投影し、コメディ的要素を持つ心理スリラーを取り上げて、テーマをしっかり楽しみながら、脚本家の声を反映できる人材。アカデミー賞にノミネートされた『ペルセポリス』と『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』はきわめて革新的な作品だった。マルジャン・サトラピ監督は優れたビジュアリストであり、マイケルの脚本の謎めいた迷宮をそのまま受け入れ、このダークでクレイジーな世界を創り出した。
マルジャン・サトラピ監督は、普段は自分が脚本を書いた作品しか手掛けない。だが「この脚本は読むのをやめられなかった」と彼女は回想する。「きわめて多義的で、じつにユニークなストーリーだと思ったわ。ジェリーの狂った世界は、統合失調症の描写として私がこれまで読んだなかで最も優れたもののひとつだった。私は現実をそのまま映画にするのがあまり好きではないの。現実には既にこうして生活しているもの。むしろ機会があれば、何かの周りにまったく新しい世界を作り上げる方がいいわ」
サトラピのビジョンを支えたクルーの主要メンバーの多くは、以前彼女とタッグを組んだ経験があった。だがホラージャンルに精通した撮影監督マキシム・アレクサンドルは新しい顔ぶれだった。アレクサンドルの初期作品の1本である『ハイテンション』は、フランス映画界におけるホラーのニューウェーブの先陣を切った作品として国際的に評価を受けている。
「『ハッピーボイス・キラー』は、最初は動物と会話する男のありふれた映画に思える。だがその後、驚くほどダークな展開を見せる、ただのスリラーやコメディやファンタジーじゃない、型にはまらない全くオリジナルなジャンル、キュートでポップなスリラー「CP(キューピー)スリラー」の誕生!